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慶くんが溜め息を吐く。
「こんなに健司にいて欲しいと思ったことねーよ、俺に瀬戸の相手は出来ねー、」
彼の言う通り、ケインはここには居なかった。4年生の春といえば、教育学部特有のイベントがある。それは、教育実習だ。実習の間1ヶ月近く、ケインとは顔を合わせていない。
「ケインくん、面倒見良さそうだから、生徒に人気ありそうだよね、」
「いつまでだっけ?」
「今週末まで。来週から、またうるさくなるよ、」
「え、ってことは今日まで?」
「そっか、今日、金曜日だから、」
すると慶くんが突然「あ」と大きく口を開けた。
「…何?」
「健司ってさ、確か高校の理科だよな。ってことは、実習先って、」
「私たちの高校?」
凛子が目をキラキラと輝かせた。
確かにケインは高校の理科の先生になろうとしていて。教育実習は基本的に母校に行くので、慶くんと凛子が通っていた高校に行っていることになる。
「…この後、フけて見に行かね?」
3人が通っていた高校。行ってみたいと思っていた。食い気味に「行く!」と返事する。
「え、でも、次は必修だし…」
真面目な凛子がノリの悪いことを言い出すから、「じゃあ2人で行こう、慶くん!」なんてちょっと高めの声で言う。と、彼女も渋々着いてくる事になった。
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