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家に着くと凛子はせっせと夕食の支度を始め、私と慶くんはダイニングに座って待っていた。
「…ねえ、ケインって、モテてたの?」
素朴な疑問だった。そう言えば、アイツの過去の恋愛を全然知らない。慶くんの話は面白おかしくネタにするくせに、自分のことは言わないからだ。
慶くんは頬杖を突いて、少し悩んだ後、答えた。
「…モテ無くは無いんじゃねーの?高校の時は彼女途切れたこと無かったし、」
「…そうなんだ、」
自分で訊いておいて、ショックを受けた。仕方がないことだけど、彼には過去の彼女が居て。私しか知らないはずの彼を知っている人が、他にも居るということだ。
私は彼を好きになって、丸くなったと思う。次へ次へと目移りして長続きしなかった私が、彼と付き合ってもう3年目だ。
だけど、彼はどうなんだろう。私と付き合って、何か得るものはあるんだろうか。
「…良いね、慶くんと凛子は、」
「ん?」
「付き合って、お互い良い風に変化して…、なんかそういうの、羨ましい」
すると慶くんが顔をしかめた。
「は?なに言ってんの?」
ーーー健司だって、今までと全然違うぞ。
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