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「瑠璃ちゃん、たっだいま~!」
満面の笑みで、座っている私に抱き着く筋肉バカ。その肩の向こうで、慶くんが笑いを必死で堪えていた。
「感動の再会のところ悪いんだけどさ、健司、」
「ん?」
「お前、今日、女子高生に告白されて、キスしてたろ?」
いきなり核心に触れたので、私と凛子はギョッとした。だけどケインは「なんの話?」と目を見開いている。
「今日な、お前を冷やかしに行ったんだよ。そしたら、放課後、校舎裏で…」
そこまで言うと、ケインは「あー!」と心当たりがあるようなリアクションをした。
「やっぱりしてたんだ、最低!」
噛み付くと、彼は両手を顔の前でブンブン振った。
「違う、違う!確かに告られたのはそうなんだけど!抱きつかれて、おデコがぶつかっただけ!キスはしてない!あれは事故!」
口ぶり的に、嘘を吐いているようには見えなかった。慶くんが呆れた表情で「そんな事だろうと思ったよ」と呟く。私が安堵していると、ケインが向き直った。
「瑠璃ちゃんが居るのに、浮気なんかするわけないだろ!な!」
ニッ、と歯を見せて微笑われて、疑った自分がバカみたいだと思った。
こんな風に不安になったのもヤキモチを妬いたのも初めてで。運命、かは分からないけど。
コイツのお陰で、私が良いように変化しているのは確実だ。
【おわり】
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