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新生活①
やっと、やっとチャンスが巡って来た。
彼女と付き合い始めて1年2ヶ月。ひとつ屋根の下、修行僧のような生活を続け、耐えに耐え抜いた日々。
やっとの事で彼女の合意を得られたその日、義母に邪魔されて好機を失い、結局触れられないままズルズルと終わりを迎えた高校生活。
だけど、もう邪魔者は絶対に来ない。
だって、今日から2人きりの同棲生活が始まるんだから…!
片付けも大方終わって、彼女がお気に入りの写真をテレビ台に乗せる。思わず、座ったまま後ろから抱き竦めた。
「…大学行っても、就職しても、一緒に居ような」
気持ちが高ぶって、思わずそんな事を口走っていた。すると彼女は吹き出す。
「…そんなクサい台詞、よく真顔で言えるね」
「うるせェなあ。そこは可愛く頷くとこだろが」
突っ込まれて恥ずかしくなり、頭を掻く。
すると彼女が突然、俺の頬にキスをした。
驚いて彼女を見ると、ニッコリと微笑っていて。
俺は彼女の笑顔が好きだ。穢れを知らない純粋な瞳。
そっと、唇にキスを返す。
少し唇を離すと、彼女の睫毛がフワリと揺れて、透き通った美しい瞳が俺を見る。堪らなくなって、もう一度唇付けた。
テレビ台の前、冷たいフローリングの上。2人共座ったままで、何度もキスして。そうしながら彼女の片方の手を包み込むと、細い指を絡めて来たものだから、愛しさがこみ上げて来る。
「…俺の部屋、来る?」
キスの合間に囁くと、彼女は頬を染めて目を逸らしながら、ゆっくりと頷いた。
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