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波乱①
「おーい!こっちこっち!」
食堂に向かうと、ケインくんが大きく手を振っていた。
「お待たせ、席取りありがとう」
駆け寄って、私と瑠璃も席に着いた。
「慶は?」
「コーヒー買って来るって言ってたけど…、あ、来た来た」
缶コーヒーを片手に、食堂を闊歩する彼。それだけで周りの女子は彼に釘付けになっていた。どうやらもう既に何人かのファンを獲得しているらしい。
「凛ちゃんたち、この後は授業?」
「うん、この後も2コマあるよ」
「慶は?」
「俺は1コ空く」
「マジか!俺も!何かして遊ぼうぜ!」
「何かって何だよ…小学生じゃねーんだから」
そんな話をしながら、お弁当を広げる。入学してからもうすぐ2ヶ月が経つが、この4人で食べるのが日課になっていた。慶と私は勿論同じお弁当で、ケインくんと瑠璃は学食だった。
「それにしても、凛ちゃんは毎日偉いよなあ!」
「…何が?」
「お弁当!毎日オカズ違うし、尊敬するよ」
「残り物詰めてるだけだから、そんなに凄くないよ。ケインくんも泊まった日はお弁当箱持って来たら?詰めてあげるけど」
そう言うと、慶が「信じられない」と言う顔で私を見た。マズかったかなと思った時には時既に遅し。ケインくんは大喜びで「俺も弁当箱買う!」と叫んでいた。
「瑠璃ちゃんは一人暮らしだっけ?」
「そうだよ、」
「自炊とかしねーの?」
「居酒屋でバイトしてて賄いが出るから、普段はあんまりしないかな」
「そーなんだ!バイトしてるのも偉いなあ!みんな偉い!」
そう言うケインくんも、ラグビー部でバリバリ部活をやっていたので、私からすればそれこそ凄いなと思うんだけど。
ちなみに慶も、近頃アルバイトを始めていた。家の近くに新しいコンビニが出来て、オープンスタッフを募集していたからだ。課題に追われながら社会勉強としてバイトまでしているので、私は家事を頑張らないとな、と思っているところだった。
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