波乱②

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波乱②

荷物を取りに家に帰った。ただ、それだけのつもりだったのに。 玄関のドアを開けると、最愛の彼女が小さくなって座り込んでいた。 「凛?」 俺に気付くと、ボロボロと涙を流しながら、何度も「ごめんなさい」と呟く彼女。微かに震えている。 「どうした…?」 背中をさすってやろうと手を差し出すと、彼女は一際ビクリと震える。 明らかに様子がおかしいと思っていたら、彼女の肩越しに、腐れ縁の男が見えた。ばつが悪そうなその顔と、震える彼女を見比べて、全てを察した。 今まで燻っていた怒りが、一気に沸点を通り越す。 「てめえ!」 ずかずかと詰め寄って、胸ぐらを掴む。 「凛に、何しやがった!?」 自分が、こんなに大きな声が出るなんて知らなかった。そんなに腹が立つことも今まで無かったので、こんなに声を張った事がない。 俺が怒り狂っているのに、目の前の男は「そんなに怒るなよ」なんて呑気な事を言っている。 我慢の限界で、俺は右手の拳に力を込めた。 ーーーダメ! 背後で彼女が言った。 「殴っちゃダメ、私が悪いから…慶の言う事を聞かなかった、私が悪いから…!」 怒りは全然収まらなかったけど、彼女に免じて手を離す。同じ空間に、もう一緒に居たく無かった。 「帰れよ。で、二度と来るな」 そう、搾り出す。健司は黙って出て行った。
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