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凛の秘密③
出発の朝は、すぐにやって来た。
飛行機は、昼過ぎの便。前日には準備が終わっていたので、起きてからずっとソワソワしていた。
9時過ぎくらいにインターホンが鳴った。玄関扉を開けると、立っていたのは総二さんとお母さん。
「総二さん…!ご無沙汰してます!」
「たまたま休みが取れてね、空港まで送るよ」
お母さんに、総二さんの車で送ってもらう予定だったから、本人も来てくれて嬉しかった。
「凛ちゃん、これで荷物全部?持ってくよ~?」
「あ、うん、ありがとう!」
お母さんが、玄関に置いていた大きなキャリーケースに手を掛けると、総二さんがそれを支えた。なんだか夫婦らしくなったな、と内心微笑ましい。
「慶も行くだろ?」
「そりゃ。最後、確認して出るから、先に車乗ってて」
玄関扉が閉まると、私は彼に尋ねた。
「確認しなくても、もうアレで全部…、」
言い終わるより先に、唇を塞がれた。
「空港じゃ、出来ないから」
音を立てて何度かそうされて、逆に離れ難くなってしまう。思わず、涙が出そうになった。
慶と離れるのは、やっぱり寂しい。
高2の秋から一緒に暮らして、最後の数日間は毎日同じ布団で眠った。バイト以外の時間はずっと私と過ごしてくれて、いつもよりももっと愛されていると実感できていた。
「…好きだよ、」
抱き寄せられて耳元で優しく囁かれ、愛しさが込み上げる。
「私も、大好きだよ…」
そう言ったら、目尻に皺を寄せて、彼は微笑った。
最後に1度だけキスをして、私達は部屋を出た。
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