2587人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
就職活動②
あんなに冷たい瞳の慶を、初めて見た。喧嘩したことなんて何回もあるし、その度に仲直りしては絆を深めて来たのに。
ーーーもう一緒にいる意味は無いと思う。
教授に話を貰った時は、胸が躍った。こんなに上手い話は無いし、騙されてるんじゃ無いかと思ってしまう程。
だけど慶と離れるのは辛いなという不安もあって。だけど留学は乗り越えられたし、初めは反対されたとしても、きっと最終的には彼も私の夢を応援してくれる。
日本と、どこかの国。遠く離れても、絆はそのままだと思っていた。
足が向かっていたのは、瑠璃の家。1人で解決できそうに無いので、彼女にすぐ相談したかった。
アポなしでエントランスのインターホンを押したら、男の人の声がした。
「…はい、」
「えっ、あれ?ここ、あれ?」
部屋を間違えたかと1人でテンパっていると、中から大きな笑い声がする。
「俺!ケイン!ビックリした?アハハ!」
その後ろで、瑠璃の「誰?」という声がする。そのいつも通りの能天気な声を聞くと、何だか泣けてきた。
「えっ、泣いてる?えっ?」
「こんの筋肉バカ!なに泣かせてんのよ!」
「俺じゃない!」
「アンタがバカ過ぎて泣いてんでしょーが、早く開けなさいよー!」
そんな口論の後、やっと入口が開いた。
最初のコメントを投稿しよう!