第一章 出会い

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 私が寛仁(ひろひと)に出逢ったのは、1999年12月20日のことだ。  当時私は、カードの勧誘スタッフのアルバイトをしていた。  そこへ、どてらを着た角刈りの青年(いつの時代の人やねん)寛仁が現れた。  勧誘に乗ってくれたと思っていたら、話が長い。  どうやら私への好意があって、勧誘を受けたらしい。  寛仁が、「君みたいな人はよそには居ない!素晴らしい!」と大きな目をキラキラさせながら言うので、  「いや、いや、いや、私みたいなのいっぱい居るでしょ。」というと、  「おらへん」と決めていうので  寛仁にカードを作らせるのを忘れて、次の寛仁の出方を待つことにした。  寛仁はそして、「橿原神宮で彼女紹介してくださいと神様に祈って君と15分で出会ったということはやな、これは神のお引き合わせやねん。ということは俺が君を送り迎えせなあかんということやねん。」と、言った。  「送り迎えって、わたし電車だから」というと、  「いやあ、乗る乗らへんは君の勝手だけど、俺は神様の紹介で君に出会ったわけだから帰りの足に使うと善いよ、駐車場で待っているから。」と言ってサラッとどこかへ行った。  なぜだろう、寛仁の言い回しというか、どっちが勧誘してるのかわからないような、こんなに激しく勧誘というか歓迎されたのも初めてだった。  それで、アルバイトを終えて、いつもは裏から帰るんだが、表から駐車場を見に行くと、寛仁が石原裕次郎の「夜霧よ今夜もありがとう」を口笛で吹いてあたしを待っているではないか。  「だからいつの時代の人やねん」と思いつつ寛仁に、  「ほな、家に送ってくれる、」というと  その恰好で、高そうな車のドアを開いて、「ようこそ、どうぞ。」と言い  「意外と紳士的な人なんだな」と思いながら  「方角は。」と聞いてきたので  「北や。」と言うと、今までに感じたこともないぐらいにゆっくりとした大らかな運転で、寛仁は北に車を走らせた。  「なんでそんなゆっくり走るの。」と聞くと  「いつかわかるよ。」と言った。  あたしと寛仁は気が付くと自然に手をつないで乗っていた。  家まで送ってもらい  寛仁は帰って行った。  別れる時に家の玄関先で寛仁は空を見上げて  「あの星が天狼星、シリウスやで」と  二人は、そして空を見上げた。 
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