撮影者

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「これは……」 「町よ。私はこうして、ここで町を見ている。見ているだけで、撮ってはいない」 「どうやってこんなことが」、と私は疑問した。視線を外して彼女の方を向く。 「それより前に、言うことが。あなたは、なぜここにいるの」 「……わからない。気づいたらここにいた。それしか今はわからないし、思い出せない」 「そう」、と彼女は言う。「私も同じ」 「そして私の場合そこには一つの枯れ木があって、カメラがあった。一面枯れ葉で、何もなかったの。今もそう。私はあなたの言う『雪』が見えないし、落ち葉が鬱陶しいことしか、解らない」  そんなはずがない。見えるものは雪だろう。私にはそうとしか映らない。 「もう一度カメラをとって、覗いて」  従った。  前と同じ、町が見える。ビルの窓から見下ろしたかのような街で、住居があり車があり、人がいて道があった。 「見えているものの詳細は解らないけど、町があることは確かでしょう。だったら、シャッターを押して」  押すと、 「風景は、切り替わった?」   その通りだった。次に見えたのはどこか欧風で近代的な、一つの町だった。車はなく馬車があった。人も帽子を被っていて、日本でも現代でもないような空間だった。
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