ニ、結婚×仕込み

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「いやあ、君を今日呼んだのは、うちの奥手の娘をもらってくれないかって見合いの打診だったんだがな」 お父さんが浮かれて、二本目のワインを開けて喬一さんに薦めていたが、私はもう物言わぬ貝になりたくて、ずっと彼の横で固まっていた。 『今でいいだろ』という言葉通り、お兄ちゃんとお父さんが一緒に帰宅した玄関で、真っ先に『娘さんを頂きたいのですが、お話聞いていただけますか』とうちの親に担架を切ったのだから本当に、すごい。 うちの父は、筋肉馬鹿でどんなに忙しくても無理してでもジムに行くほどの若造りで、見た目もいかつい。最近は、格好いい髭を生やしたいと顎鬚を生やしだしてやくざみたいな顔になっている。 こんな親のせいで財産目当ての人しか近づいて来れなかったのに、家庭教師で毎日うちの実家に来ていた喬一さんは全く動じない。 後ろで、兄が苦笑していたのだけはちょっと気になっていたけど。
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