一、誤解×素材

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残秋を感じさせる冷たい風が、体に刺さるようになってきた季節。 必死でタイピングしている私のデスクの窓からは、枯れた落ち葉が地面を這いずって飛ばされている。  秋が終わるのは構わない。が、会社の女性社員たちは、来るビックイベントまでに彼氏を見つけようと色めきだっているのが、伝わってくる。  今、必死で定時に帰ろうと書類を終わらせている私の横で、合コンの話を取り付けているのだから。 「えええ! 今日の相手ってこの前、アドレス交換したあの人たち? 確か外科医だったよね」 打ち合わせが二件。資料請求が四件。見積もりが三件。 メールの返信が二件。ファックスの返信待ち一件。デザインの打ち合わせが三件。 「そうなの。この前、営業でうちに来た時に名刺を置いていったでしょ。その時に電話しちゃった」 「やった。今日、奮発して買ったワンピースで出勤しちゃったんだよね。楽しみ」 「終わり!」  同僚二人が飛び上がるほど大きな声でついそういってしまうと、パソコンをシャットダウンさせながら二人を見る。 「もしかしたらファックスが来るかもしれないから、来たら私のデスクの上に置いておいて」
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