一、誤解×素材

3/11
1195人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
「う、うん。もう帰るの?」 「紗矢もよかったら、合コン……行かないよね」  ロッカーに向かいながら、二人に私は微笑む。 「ごめんね。今日は社長と代表取締役会長と食事会なの」 「それってつまり」 「そう。家族で食事」  同僚の二人は『大変だね』と苦笑いして私を労わってくれたが、ごめんね。  食事会というのも少し語弊がある。 「せっかく紗矢は綺麗なのにこのままじゃ、本当に結婚できないよ」  心配してくれたのは、同僚でもあり大学からの気の置けない友達でもある、藤森小春。  私が人目を惹く容姿をしているから、合コンのエサに使おうとしていた清々しいほどの肉食系女子だ。  その清々しさと遠慮しないで言い合える性格のおかげで、私もなんでも話せてしまう。  見た目は小動物みたいに小さくて可愛いのに、高級な肉しか食べない肉食系の彼女は、合コン相手もいちいち一流企業とかスポーツ選手とか派手だ。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!