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『お、なんだオマエ、俺のこと見えてんのか?』
「な、なんだよっ……あれ?」
空中で逆さまになりながらボクに話しかけるヒトから、ボクの大好きな人と似た匂いがして思わず匂いをかけば、やっぱり似ている。
「……あなた、だれ…?」
首を傾げながら問いかけたボクの頭を、目の前のヒトがわしゃわしゃと撫でてくる。
『俺か? 俺はこいつの父親だ』
そう言って大きな石の上に座って笑う目の前のヒトの笑顔は、ボクの大好きな人ととても似ている。
ポン、ポン、と優しく撫でられた手に、手の持ち主を見上げれば、ボクの大好きな人が、まだ大きな石に向かって話しかけながらボクを撫でているけれど、一向に、大きな石の上に座ったヒトには気が付かないらしい。
「ねえ、ねえ」
そう話しかけても、君は「どうしましたか?」といつもと同じ優しい顔でボクに問いかける。
「あそこに、きみのおとうさんだっていうひとがいるよ」
ボクの言葉は、いつも君には伝わらなくて、君は「もう少しだけ待ってくださいね」とまた少しだけ寂しそうな顔をしてボクを撫でる。
『悪いな。俺の声は、そいつには伝わらないんだ』
思わず座り込んだボクに、目の前のヒト、じゃなかった、ボクの大好きな人、のおとうさんは、ボクの大好きな人を見ながら静かに呟く。
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