「ボク」とボクの大好きな人に似ているヒトの話。

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「ごめんなさい。ボクのこえも、つたわらないんだ」  哀しそうな、寂しそうな顔をしたおとうさんに、しゅんとしながら答えれば、おとうさんは『伝わってるさ』ととても優しい顔をして笑う。 『お、そろそろ帰る時間みたいだな』  おとうさんがそう言ったのと殆ど同時に、ボクの大好きな人が立ち上がり、「そろそろ行きましょうか」とボクの頭を撫でる。 「おはなししなくていいの?」  おとうさんと、大好きな人を交互に見ながら言ったボクに『いいんだよ』とおとうさんは笑う。 『いつでも上から見てられるからな。心配すんな』  そう言って、ボクの頭をまたわしゃわしゃと撫でたおとうさんが、ボクの大好きな人の頭も、わしゃわしゃと撫でる。  その瞬間、ぶわ、っと強めに風が吹き、おとうさんの姿は見えなくなった。  ぽかん、とした顔をした君が、不思議そうな、顔をしながら自分の頭を抑える。 「どうしたの?」  そう問いかけたボクに、君はボクを見たあとに、また空を見て、今度は嬉しそうに笑う。 「父さんが、いた気がしたのですが、気のせいですかね」  ふふ、と笑いながらボクを見る君に、ボクのお腹のあたりはなんだかホカホカとしてくる。  君の心も、ボクみたいに少しでもホカホカになったら良い。     
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