第1章静かなる覚醒

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僕の名前はケイオス。 僕の父は天空人だった。グズ鉄街のはるか、上空に浮かぶ天空の都市、エルサレム。誰が何の目的で作ったのか、天空人だったという父すらも教えてくれなかった。聖なる民だけが、住めると言われ、エルサレムの下界はほぼ地獄だと天空人は思っているらしい。 父さんはどんな人なのか、わからなかった。その、内面をとらえるのは、息子の僕にも出来なかった。         父は科学者だ。どんな研究をしているのかも、教えてくれない。  ノヴァ(僕の父)「ケイオス、父さんはね、とても理にかなった研究をしているのです。そうとだけ、言っておきましょう。つまり、とても難しく、面白い研究をしているのですよ。研究というのは、まずある出来事を、疑って仮説を立てて、実験ということを繰り返して仮説を証明していくことです。おっと。幼い、息子のお前にはまだむずかしいかな?」 父の本性を知らない僕は、息子の僕さえ、実験台(モルモット)にしていることにも気付かなかった。 ある時、僕は父親の雇っている屈強なボディーガードを12歳の僕が手首の骨が外れるまで、ボコボコに殴り倒してしまったらしい。僕には、記憶がなかった。 あったのは、薄れゆく意識と戻っくる意識。 戻ったとき、我に返った時に僕はぐちゃぐちゃになった父のボディーガードと、自分の手首の骨が外れ、手が真っ赤に染まっていて恐ろしくて、「うわーん、うえーん。痛いよー、なんで、僕の手とこの人(ボディーガード)はぐちゃぐちゃなの?」という感じだった。 この頃から、だった。衝動性、抑圧されたリビドーの爆発、そして覚醒した僕の中のもうひとりの僕。 僕はそれをイカリ(怒り)と呼んで、 お父さんにイカリを抑える注射をしてもらっていた。 そして、僕はイカリをうまくなるべく表に出さないように訓練した。 その代わりに、別の問題が出てきた。
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