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幽世姫と朝霧君
天高く、柔らかな陽光は世界を優しく包み込む。若々しい緑を湛えた木々は風に歌い、二羽の小鳥が仲良く連れだって飛んでいく。
こんなにも穏やかな日には、芝生に寝転がってのんびりと昼寝でもするべきだ。断じて大学などという面倒の塊のような場所に居るべきではない。
「そうは思わないかい?」
「思わねぇよ。いいからさっさと食えよ、直音」
僕を半目で睨みながら、小学校からの腐れ縁である〝南雲健斗〟が割り箸の先端をこちらに向ける。
ちなみに直音と言うのは僕の名前だ。〝朝霧直音〟。まぁ、どうでも良いよね。
「ねぇ健斗。なんで生きるのってこんなに面倒なんだろう」
「お前、本当に昔っからダウナーだよな。いつも寝不足か? 夜な夜な世界でも救ってるのか?」
「そうだよ。って言ったら信じる?」
「信じるよ。そしてうちの病院のベットを一つ空けてやる」
健斗は病院の息子だった。それも大病院。その気になればいつでもニート生活できるのだ。羨ましいなぁ、と過去に言ったら、頭を小突かれて「ボンボンにはボンボンの苦労があんだよ」と怒られたことがある。
「お前、よくそれが食えるな」
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