幽世姫と朝霧君

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 健斗が僕の目の前にある『テラ盛り牛丼』を見遣る。 「みんなが言うほど不味くないよ。それに、これを食べれば三日は何も食べなくても生きていけるからね」 「その脳が痺れるほど甘い牛丼がか? お勧めしねぇな、その食生活は」  健斗が大げさにため息をつき、自分の焼き豚丼を豪快に掻き込む。どん、とどんぶりをテーブルに置き、こちらをじっと見つめてくる。 「何? 僕に恋でもしちゃった?」 「ふざけんな。アルカパの方がまだ良いわ。まぁそれは置いておいて、何でお前ってモテないんだろうなと思ってな」 「さぁ。顔じゃない?」  適当にそう返すと、健斗がこれでもかと言うほど大げさに肩を竦める。アメリカにでも移住したらいい。 「確かにその覇気もしまりも無い顔は問題だけどな。でも、お前は勉強しないくせに成績は良いし、スポーツもゲームも芸術も、やれば人並み以上だ」 「天才と言われる人たちには遠く及ばないけれどね」 「中途半端に謙遜するな。スペックは高いと思うんだけどなぁ」  本気で心配しているような表情で、大病院の一人息子という立場の健斗がそんな事を言う。  不意に、食堂の出入り口が色めいた。僕はなんとなしに視線を向ける。 「見ろよ直音。〝持てる者〟の御登場だ」     
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