4人が本棚に入れています
本棚に追加
健斗が僕の目の前にある『テラ盛り牛丼』を見遣る。
「みんなが言うほど不味くないよ。それに、これを食べれば三日は何も食べなくても生きていけるからね」
「その脳が痺れるほど甘い牛丼がか? お勧めしねぇな、その食生活は」
健斗が大げさにため息をつき、自分の焼き豚丼を豪快に掻き込む。どん、とどんぶりをテーブルに置き、こちらをじっと見つめてくる。
「何? 僕に恋でもしちゃった?」
「ふざけんな。アルカパの方がまだ良いわ。まぁそれは置いておいて、何でお前ってモテないんだろうなと思ってな」
「さぁ。顔じゃない?」
適当にそう返すと、健斗がこれでもかと言うほど大げさに肩を竦める。アメリカにでも移住したらいい。
「確かにその覇気もしまりも無い顔は問題だけどな。でも、お前は勉強しないくせに成績は良いし、スポーツもゲームも芸術も、やれば人並み以上だ」
「天才と言われる人たちには遠く及ばないけれどね」
「中途半端に謙遜するな。スペックは高いと思うんだけどなぁ」
本気で心配しているような表情で、大病院の一人息子という立場の健斗がそんな事を言う。
不意に、食堂の出入り口が色めいた。僕はなんとなしに視線を向ける。
「見ろよ直音。〝持てる者〟の御登場だ」
最初のコメントを投稿しよう!