幽世姫と朝霧君

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 黄金の中に一筋だけ銀を混ぜ込んだような、冷たさを感じさせるブロンドの髪。大胆にカットしたサファイアを思わせる、大きな蒼い瞳。その美貌はスラリとしたうなじに支えられ、豊満な肢体が圧倒的な存在感を放っている。まるで歩く芸術品のようだった。  彼女の名前は〝姫川莉乃〟。始めに言っておくが、中学生の描いた少女漫画にでも登場しそうな程、ハイスペックだ。  日本を代表する大財閥の一つである〝姫川財閥〟の四女。フランス人女性とのハーフであるらしい。  その圧倒的な美貌。魅惑的な身体。そして超越的な権力。天から三物を与えられた、まさにこの大学の〝姫〟と言える存在であり、全学生の憧れの的である。本当にこんな人間、実在するんだなぁ、という感想しか出てこない。  そして、僕の想い人でもある。まぁ、なんとなく「いい感じになれば良いな」という程度だが。 「かーっ! やっぱ良いよな、姫川莉乃! お近づきになりてぇー!」 「健斗、おやじくさいよ」  姫川さんが歩くと、まるでモーゼの奇跡のように人垣が割れていく。カウンターでコーヒーを受けとり、食堂窓際にある隅の席へと腰を下ろす。そこは彼女の指定席だった。 「相変わらず一人みたいだな」  健斗が姫川さんの周囲を観察しながら言う。     
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