幽世姫と朝霧君

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 僕も上半身裸になって身体を拭くが、どうもべた付きが気になった。即席離乳食の匂いをしきりに嗅いでいる子猫を放っておいて、シャワーを浴びる。  蛇口を捻り、シャワーが湯になるのをのんびりと待つ。幾筋もの水流が浴室の壁を叩く音を聞いていると、考えるともなしに様々な思いが浮かんでくる。  成り行きとはいえ、拾ってしまった。連れ帰ってしまった。  飼うのか? 僕が? なぜそんな面倒事を自ら抱え込んでしまったのだろう。  ……まぁ良いか。解らない事は健斗の奴に聞こう。ま、餌だけやっていれば勝手に育つだろう。  適当に雨を洗い流し、バスタオルで乱暴に頭と身体を拭きながらワンルームに戻る。  おや、と思い辺りを見回すが、例の子猫の姿ない。残されているのは空になった即席離乳食が乗っていた小皿のみ。  気にはなるが、とりあえずは着替えだ。そう思って部屋の隅に放置してある、洗濯済み衣類の中に手を突っ込む。  ふと、指先に毛皮の気配。はて、そんな服を持っていただろうかとシャツを捲りあげる。 「……こんな所でくつろぐなよ、お前」  僕のシャツに身体を沈め、ぷっくりとお腹を膨らませて幸せそうに眠る子猫の姿がそこにあった。中々逞しい奴だ。  ま、居心地が良いようで何よりだね。             ☆     
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