31人が本棚に入れています
本棚に追加
「は? 変更? ンなこと頼む奴、初めて見たぜ……」
シドは目を半分閉じて、呆れたように言った。がくり、と肩を落としてリリスを見る。じっと思案するような顔をした後、力なく笑った。
「ま、考えておいてやるよ。次、泣いたらお仕置きだからな。覚悟しておけよ」
シドはリリスの額を指先ではじいた。
「で、できるだけ優しくしてくださいね?」
リリスは額を抑え、微笑んだ。すでに涙は止まっていた。
「もちろんだよ」
晴れやかに笑うシドに、リリスは目を奪われる。意地が悪いわけでも、怒っているわけでもない、普通の青年の笑みだ。
初めて見る表情に目を奪われる。その間に、シドはリリスの頬に手をそえた。鋭い双眸が三日月のように細くなる。
無邪気だったシドの笑みが、妖艶なものに変わった。
「死ぬほど優しくお仕置きしてやるから、楽しみにしてろよ」
不意に近づいたシドの顔に、リリスは息を飲んだ。
身を屈めたシドに、身を強張らせる。
(やっぱり、噛みつく気だ!)
そう思い、目を強く閉じた。
「……何をしているんですか! そんなひと気のない所で、不埒な空気を醸し出すなんて」
その時、トロイの声がした。
最初のコメントを投稿しよう!