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「度胸も何も、貴方を恐れたことなど一秒たりともありませんから。私の行動の障害になりようがありません。いささか、自意識過剰なのではありませんか? それとも、政治家になると誰しも自分を過大評価してしまうものなのでしょうか。安心してください。貴方が思うよりも、貴方という人間の大きさは数年前から変わりはありませんよ。変わったとしたら、その体に付いた肉と垂れ下がった皮膚くらいじゃないですか? ――ああそれと、後退した髪も忘れてはいけませんでしたね」
冷静――ではあるが、舌戦における猛攻は、嘗て陸軍少将として名をはせたブラックには負けない。
容赦ない言葉の銃撃を受けたブラックは、唇を噛みしめて震えた。顔が真っ赤に染まっていく。今にも破裂しそうな赤い顔を見て、アルバートはほくそ笑んだ。
「黙れ、この薄汚い犬が……!」
「そのようなありきたりな罵りに、誰が感情を乱すと思います? 私を怒らせたいのなら、もう少しセンスのある言葉でお願いしますよ」
相変わらず、ブラックという男は感情に正直だ。
そう思ったが、昔よりはましになったようだ。ブラックは深く息を吸い込むと怒りをかみつぶしたように言った。
「少将という名誉は奪われたが、今はもう気にしていない。何をしても下ろされることのない、形だけの地位であるお前と私は違う」
「そうですね。今は政治家でしたね。――良く知っていますよ。最近は新しくできた党にご執心みたいじゃないですか」
アルバートはブラックに探りを入れるが、ブラックが言葉に詰まることはなかった。
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