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(あの、ユニという男にはなにかあるにちがいない)
アルバートがいけ好かない男に会いに来たのは、ユニという男を調べるためだ。
ブラックはじっと考え込むように、アルバートを見やる。たっぷりと間を開けると、おもむろに口を開いた。
「ユニには才能があった。大衆の心を惹きつける才能がな」
「心を惹きつける、ですか。私にはそうは思えませんけれどね。あれは、心を惹きつけているのではなく、焚きつけていると言った方が正しい。欲しい言葉を与え、仲間を与え、自分たちが正しいという優越感にも似た欲望を満たしてくれる。彼に付き従っていれば、偽りの自意識を満たせる。――支持者には彼らの掲げる自由すら見えていない」
報告書を読み、アルバート自身も先日の神聖国民党の集会に出向いていた。もちろん、お忍びで変装をしていたため、リリス達には気が付かれていない。
いわば、リリスらはおとりだった。どうやら、ユニはリリスに恋愛感情があるらしい。そして、彼女がハンターということも承知していた。その上で、集会に誘ったのだ。政党の中心人物たちに、リリスらは見張られるだろう。彼らの目がリリス達に向いている間に、アルバートはじっくり政党を調べていた。
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