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 そんなある日、ファントム捕獲任務中にアルバートは致命的な負傷をした。それでも、ファントムの力のおかげでなんとか助かる程度の怪我だ。アルバートは冷静だった。一旦、地上班と合流して態勢を立て直そうとディアナに言おうとした。だが、ディアナはアルバートを見下ろし、震えていた。  彼女は明らかに平静さをかいていた。アルバートの背筋に冷たいものが走った。次の瞬間、錯乱したディアナは一人、真正面からファントムに向かって行った。  ――そして、彼女は死んだ。 (あの時、彼女の気持ちをはっきりと切り捨てていれば、彼女が錯乱することもなかった。隊員同士の関係を超えていたからこそ、彼女は感情で動いてしまった)  ディアナの気持ちに気が付かないふりをしたのは、アルバートにも少しながら同じような好意があったからだ。隊員同士の私情介入は、当時から危険視していたというのに。あの時の事を思い出すと、自分に嫌気がさしてくる。  隊員同士の恋愛は禁止。それは、アルバートが隊長となってから、隊員たちに厳しく言い聞かせていることだ。あの時の事故の戒めとして、自ら作った規則だ。 (あの事件はこの男と出会ってからしばらくしてから起きたのだったな)  先ほどのブラックの言葉を思い出す。まるで、あれが天罰だと言わんばかりの言葉だ。
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