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「……控えめなことを言う方だな。面白い」
「わたしが、控えめで面白いですか? どちら様か存じませんが、そのようなことをいう貴方もよほどの変わり者です。……はっ! もしかして、じめじめして面白いと言う意味でしょうか」
さっと、顔を青ざめさせてリリスは絶望する。
わなわなとハンカチを握りしめていると、青年の堪えるような笑い声が聞こえた。
「……なんだか、誤解させてしまったようだね。私はただ、君のような愛らしい女性が暗い顔をすることが嫌だっただけなんだ」
青年はさらりと、恥ずかしいことを言ってのけた。リリスの顔が赤く染まっていく。
「申し遅れたけれど、私はユニ・マジソンと言います」
「ユニさん、ですか。わたしはリリスと申します。わたしみたいな女を慰めるばかりか、ハンカチまで貸していただいて。何かお礼がしたいのですが、わたしなんかに出来ることなんてあるのでしょうか……。ハンカチを買って返すのは当たり前ですが、他にわたしにできることと言ったら、幾ばくかのお金をお渡しするくらいしか思いつきません」
リリスは腕を組んで、うんうんと唸った。思考を巡らせてみるが、何も思い浮かばない。
「お礼なんていらないさ。私が勝手にしたことだからね」
「そんなわけにはいきません! 何かお礼をさせてください!」
強く握り拳を作ってリリスが言うと、ユニは眉を下げて微笑んだ。そうかと思うと、何かを思い出した表情を浮かべ、懐に手を入れた。
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