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「そうだ……。もしよかったら、今週の日曜日に集会をするのだけれど、君も来てくれないかな」
「集会? なんのことでしょうか」
リリスが首を傾げると、ユニは懐から出した四つ折りの紙を渡した。
「……神聖国民党って、知らないかな」
紙は新政党の政治活動用のちらしだった。赤い字で党名と、凛々しい政治家の顔が描かれている。
「すみません、初めてお聞きします」
「そんなに恐縮しないでくれ。我々の党は最近発足したばかりだからね。まだまだ、認知度は低い。それでも、徐々にだが支持者が増えていてね。毎週のように集会をするんだけど、かなり好評なんだよ。だから、君も今度の日曜日に良ければ来てくれないかな?」
「しかし、女子がこのような政治の場に顔を出してもよろしいのでしょうか」
庶民の、ましてや女がこういう事に首を突っ込むことは、あまり良く思われない。集会に出向いて周囲から奇異な目で見られるのは気が進まなかった。
「心配しなくてもいいさ。我々の目標は、すべてのイングランド人に平等な世の中にすること。その中には女性も含まれている。君も知っているだろう? 最近、巷で選挙権を巡って労働者たちが運動を起こしたことを。あれは失敗に終わったが、確実に世の中の流れは変わってきている。じきに君たちのような女性も、政治に関わる世の中になるよ」
熱のこもった声で言われ、リリスは感心した。
温和な青年だと思ったが、心の内には熱いものを秘めているようだ。志の高い言葉を否定するわけにもいかず、首を横に触れない。
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