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「ここにわざわざ私が出向いたのは、他でもない。先日の任務についての事後報告のためだ。そっちの野良犬のせいで面倒なことになったと思っていたが、更に面倒なことになった。……それはもう、面倒でな。これ以上話してられんので、後はユリウスに頼む」  ちっ、ちっ、とアルバートは何度も舌打ちをしながら背後を見た。  控えていたユリウスが前に出る。いつもと違い白衣を着ていた。 「先日の任務で捕獲したファントム症候群患者ですが、船上監獄へ搬送する前に行った検査で、重大なことが判明しました。――調べたところ、今回そちらの坊やが半殺しにした患者は、ファントム患者ではありませんでした」  ユリウスは資料に目を落とした。 「どういうことだ? 確かに俺たちが戦ったのは、ファントム症候群患者だったはずだ」  直立していたアーサーがユリウスに歩み寄る。  他のハンターらにも、動揺が走りざわついた。例にもれず、リリスも瞠目する。  その中で、シドだけはつまらなそうに隣であくびをしていた。 「そうですね。確かに捕獲した患者はファントムでした。しかし、それは今までの患者とは違う。そして、我々とも違う。気づいた時には、すっかりファントム症候群が完治していたのです」  ユリウスは少し言葉を切り、視線をシドに向けた。シドは訝しげに眉をひそめる。
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