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「落ち着いてください、シド! いったい、どうしたのですか?」  リリスはアルバートに詰め寄るシドの腕を掴んだ。  壁から腕を離したが、シドはアルバートを睨んだまま動こうとしない。血走った目に、ぞくりと背中が泡立った。  筋肉は力みすぎて震えていて、尋常ではない精神状態だ。猛獣のような目つきに、恐怖よりも不安が胸にせり上がってきた。 「シド、やめてください……。お願いですから」  声を詰まらせながら、リリスはシドに縋り付いた。震えながらも腕に抱き着くリリスを見たシドは、そっとアルバートから離れた。 「――愚行を悔やむがいい。次はないぞ。心得ておけ、野良犬」  アルバートは襟元を正し、シドの胸を押した。  乱暴な仕草に、シドは再びアルバートに詰め寄ろうとする。それを必死で止めながら、リリスはシドの怒りの原因が気になって仕方がなかった。  気になったのは彼がバディだからだけではない。傲慢で気位の高い青年の、ふとした感情の起伏がどこか危うく見えたからだった。
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