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2-6
談話室を飛び出したシドは、苛立ちを募らせながら自室に向かった。
「……待ってください、シド!」
背後から追ってきた女に、シドは舌打ちをした。
振り返ることなく、彼は足早に回廊を歩いて行く。薄暗い地下に、二人分の足音が響いた。その音は徐々に離れて行き、とうとう一つの音が止まる。
やっと諦めたか。そう思い、シドは振り返った。
リリスの姿は見えない。ほっと、息を吐く。だが、視線を下げた拍子に見慣れた革のドレスが見えて、目を見開いた。
「なにやってんだ、この馬鹿!」
どうやらリリスは転んでしまったらしい。地面に倒れ込むリリスに、シドは一瞬ためらいながらも駆け寄った。
膝を折り、リリスの体を抱き起こす。
「す、すみません。頭を少し打ってしまって、一瞬、意識が飛んでしまいました」
力なくリリスは笑う。額が少し赤くなっている。
シドは大げさにため息を吐くと、リリスの膝裏と背中に手を回して持ち上げた。
「ふわっ、何をするのですか! 高いです!」
「うぜぇ上に、どんくさい女だな。いいから、大人しく俺に任せろ」
面倒くさいが、部屋に運んでやろう。一応、この女には借りがある。独房での手当てを思いだし、シドは自分にそう言い聞かせた。
(面倒くさい女だな……)
自分の事なんて、放っておいてほしい。そう思いながらも、腕に抱える女の事を放置することが出来ないことにシドは苛立った。
乱された心が、リリスのせいで幾ばくか落ち着いた。そのことには感謝しつつ、リリスの部屋の扉を蹴り破った。
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