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「じゃあな」  シドは踵を返し、足早に部屋から立ち去ろうとした。 「待ってください! わたし、シドに訊きたいことがあるんです!」  背後から伸びた手が、シドの腕を掴む。 「うぜぇ、俺は話すことなんて何もねぇ。俺は機嫌が悪いんだ。イライラするから、これ以上近づくんじゃねぇ」  シドは掴まれた腕を振りほどき、リリスを突き放す。力加減ができなかったせいで彼女の体が吹っ飛んだ。  壁に背中をぶつけたリリスに、シドは動きを止める。ファントムの力のせいで、壁に少しひびが入っていた。普通の人間ならば、内臓くらいやられていたかもしれない。見た目は普通の少女だが、リリスもファントムの力を持っていることを思い知らされる。  しかし、ファントムの中でも力の強いシドに吹き飛ばされたのだ。リリスは顔を苦痛に歪めた。  手を差しだそうか悩んでいると、彼女は自力で起き上がる。 「先ほどの、隊長の話を聞いてから様子が変ですよ。一体、どうされたのですか? ファントム菌の研究と、何か関係があるのではないですか?」 「……あったとしたらどうなんだよ。お前には関係ないだろうが」 「あります。大ありです! わたしと貴方はバディです。それに、貴方を放っておけないんです」 「誰が世話焼いて欲しいなんて言った? そういうの、ホントうぜぇ」  目を見ずに背を向けたのは、これ以上自分の中に入ってきてほしくなかったからだ。そんな思いに反して、リリスは後を追いかけてきた。  シドはリリスが腕を掴む前に彼女の肩を掴んだ。そのまま、リリスをベッドに押し倒す。
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