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演説の前にユニが入ったドアの向こうは、廊下になっていた。薄暗い廊下の奥がユニの控室だ。
ノックをしてリリスは部屋に入った。
「――やあ、よく来てくれたね」
ユニは額に汗をにじませたまま、ソファで横になっていた。運動をした後のような清々しい表情だ。上着を脱ぎシャツの腕をまくり、シャツの釦を幾つか外している。はだけたシャツから胸元がのぞき、目のやり場に困る。
ユニが起き上がると、リリスは頭を深く下げた。
「今日は申し訳ありませんでした。あの二人に代わり、謝罪させてください」
「構わないよ。あんな騒ぎ、子供の喧嘩よりも可愛いものだよ。普段はもっと派手な騒ぎになることもあるから。我々の考えに反する奴らが暴れまわったりね。だから、気にすることはない。それよりも、君と話がしたい。私の演説の感想を聞かせてくれ」
さあ、と言ってユニは腰かけているソファを手で示した。
リリスは断ることもできず、ユニへ歩み寄ろうとする。
その時、急にユニは声をあげた。
「止まって!」
体を倒したまま、リリスに手のひらをむけた。その目は演説中と同じ、どこか恐怖心をあおるものだ。
「ど、どうかしましたか? なにか、お気に障ることでも――」
「静かに」
ユニは口元に人差し指を当てた。
胸を鼓動が激しく打ちつける。リリスはユニの目を見つめたまま動けなくなった。
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