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「君は私の母親によく似ている。私の母は、私が八つの頃に亡くなったのだけれどね。思い出の中にいる母の面影は、今も瞼の裏に焼き付いている」  ユニは目を閉じた。長い睫毛を伏せ、すとんと手をおろす。  とたんに、ユニの目から一筋の涙が零れ落ちた。リリスはぎょっと、目を丸くした。どうしていいか分からず、おろおろとハンカチを取り出した。 (ユニさんのお母様は、服毒自殺したのでしたね。――可哀そうに、辛かったのでしょう。わたしにその姿を重ねるなんて、よほどお母さまの事が忘れられないのですね)  ゆっくりと目を開いたユニが、ハンカチを受け取った。 「君は特別だ。――純粋で、可憐で、清廉で、まるで聖母のように完璧な女性だ。君の隣にいるのは、僕のような男が相応しい」  ユニはハンカチで目元を拭いた。力ない微笑みに、リリスの胸が締め付けられる。 (こちらが泣きたくなるほど、儚げな顔――)  傲慢な言葉すら、リリスの耳には届かなかった。  目の前の男があれだけ力強い演説をしていたようには、到底見えなかったからだ。触れてしまえば壊れてしまう、雪の結晶のように繊細で美しい表情だ。  思わず、手を差し伸べたくなった。  ユニの泣き顔を見たとたんに、すべてのものを投げ出してでも悲しみを取り除きたいとすら思えた。無条件にそんな思いを抱いていることに、ふと気がついた。  同時に自分が恐ろしくなり、ぞっとする。  すると、ユニが再びリリスの手を握りしめた。
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