31人が本棚に入れています
本棚に追加
/219ページ
3-5
ユニの部屋を出たとたん、シドの手に力がこもった。
「シド、痛いです!」
掴まれた手の痛みにリリスは顔を歪める。パブへと続く廊下を歩いていたシドは、控室から少し離れたところで立ち止った。
振り向いたシドの目は、怒りに染まったままだった。
「もっと痛いことされてたかもしんねぇんだぞ。――一人でのこのこあんなところに行きやがって。あのまま俺が助けに行かなきゃ、どうなってたと思ってんだ!」
激しい剣幕で怒鳴ったシドは、リリスの肩を両手で押さえた。
「ごめんなさい……。でも、ユニさんがあんなことするなんて思わなくて」
「あんなことすると思わなかっただと? 笑わせんなよ。警戒心解くほど、てめぇはあの男の事を知ってたのかよ。テロリストの仲間かもしんねぇんだぞ。そんな男に自分から会いに行くなんて、頭が軽すぎて笑っちまうな」
鼻で笑われ、リリスは落ち込む。
(シドの言うとおりですね……。わたしはなんて愚かなことをしたのでしょうか。軽率で軽薄で、自分でも笑いが出てしまいそうです)
任務のためとはいえ、考えが浅かったのかもしれない。結果として、シドを怒らせ、ユニを傷つけてしまった。これが原因で今後、党に近づくこともできなくなるかもしれない。そうなれば、潜入調査は失敗だ。
俯いたリリスの目に涙が浮かぶ。
大きな瞳に浮かぶ雫を見たシドが、大きなため息を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!