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「――泣くなっつーの、面倒くせぇ。だいたい、人がどれほど心配したとっ!」  言いかけて、シドは口を押えた。 「心配、してくださったのですか?」  リリスは涙をひっこめ、顔をあげた。口元を手のひらでおおい、シドはついっと視線を横に逸らした。その頬は、かすかに上気している。 「……ちげぇよ。ただ、お前に何かあれば、うるせぇ奴らがいるだろうが。そうなれば面倒だっただけだ」  もにょもにょと、罰が悪そうにシドは言う。面倒、と言われながらもリリスは目を輝かせた。 「だっ、大体な! お前は人の言う事に忠実すぎんだよ。嫌なら断れ! 自分の意見って奴がねぇのかよ」  冷たい視線がリリスに突き刺さる。 「ホントは、外からお前とあの野郎の会話を聞いてたんだよ。胸糞悪かったが、お前が来るなっていうから、マジでやばくなるまで我慢してやったんだからな。でも、あの野郎と同じくらいお前も胸糞悪かった」  シドの声に影が差す。とたんに、リリスの心は凍りついた。軽蔑にも見える目つきに、唇が渇いた。 「誰の言葉にもはいはい頷いてりゃ、そりゃあ楽だろうな。あれじゃあ、集会に来てた奴らと同じじゃねぇか。あの男に煽てられてその気になったのかよ」 「それは、違います!」 「だったらなんで、あんな風にあの男に触ったりしたんだ。言われるがままに、頭をなでるだと? あんな気持ち悪い頼みを簡単にききやがって」  シドは怒りに顔を染めた。
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