nobleness

6/7

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 私には彼女がまぶしく見えた。きっと彼女は圧倒的な作品に打ちのめされても、再び筆を執るのだろう。私はできない。そんなことを体験したら、これまで私に寄り添ってくれた想像の世界はあっけなく崩れ去ってしまうだろう。私にあるのは脆弱な想像の世界で、だからこそ彼女の持つしたたかさが魅力的に映った。  彼女の視線が彼女の内側に向くように私が誘導することもできるかもしれない。でも、私はそれをしたくない。彼女が自然と彼女自身を捉えるようになるならいい。だが、私の言葉程度で彼女の苦悩を取り除くのは癪なのだ。私の中で、彼女は向上心を秘めた気高い薔薇のような少女だから。自分の麗しさに気づかず煩悶する可愛い少女。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加