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スタジアムに照らされて
「まったくこないだの台風には参っちゃったわよ」
ミキは、今年に入って知り合ったばかりの年下の若葉に愚痴をこぼしている。
「あんたももうすぐ行っちゃうんでしょ」
春にミキのもとにやってきた若葉は冬を待たずにどこかへと行ってしまう。
ミキと古くからの付き合いの隣の住人が、そんな会話を聞きつけて話しかけてくる。
「若葉ちゃんがいなくなると寂しくなるわね」
横浜の日本大通りには、この夏の激しい暑さが嘘だったかのように涼しい風が吹きはじめている。
「あら、あんたんとこも台風の影響がひどかったんでしょ、塩害っていうのかしら」
ほんの少し前、この辺りにひどい台風がやってきた。
豪雨と強風もさることながら、海風に含まれた塩分のお陰でミキたちは大変な思いを強いられていた。
「旦那はあてにならないしね。子育てもしないで、ほんといい気なものよ」
ミキの愚痴は止まらない。
「今年はベイスターズもクライマックスシリーズにも進めなくてほんと残念よ」
「ほんとよね、クライマックスシリーズまで進んでくれでもしたら、この辺りもまた賑やかになるのだけどね」
気がつけば、そんなミキたちの愚痴を素知らぬ顔で周りの住人たちも聞き耳をたてている。
「ゲームがなけりゃ、スタジアムの照明だって輝かないし、なんだか寂しくなっちゃうわよね」
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