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それは、嵐の夜のことだった。
「……って、待て待て待て!!」
慌ててベッドから起き上がったカイリは、窓に飛びつきへばりついた。
外は雨に強風が伴い、背の高い木が何本も大きく揺れている。
問題は、それらを含めた景色にまったく見覚えがないことだった。
「外国なのか?」
カイリの記憶が確かならば、眠る直前まで貧乏アパートのカビくさい畳の上で、だらだらとおもしろ動画を検索していたはずだった。
せんべい布団に潜り込んだ覚えがないので、うっかり寝オチしてしまったのだろう。
夢の中だと言われれば納得しなくもないのだが、ヒヤリとした窓の感触や轟々と恐ろしげな雨音が空想の産物にしてはリアルすぎる。
「カイリ様?」
暗闇の中で名前を呼ばれて、大の男ながらも全身に緊張が走った。
パチリと部屋に照明がつき、相手の姿が見えると、それはそれでドキリとしてまう。
なぜなら、そこにいたのは目の覚めるような女性だったからだ。
艶めくブロンドの髪に、青みがかった大きな瞳で、少女のような可憐さのある絶世の美女だ。
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