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雪がちらちらと降る夜。
煙管で紫煙を燻らせながら彼は街を見下ろしていた。
盆灯りに照らされた顔は何も感情が読めない、そんな表情を浮かべていた。
ピュイピュイピューッと笛の音がした。そろそろ始まるのだろう。
あやしの時間が。燈籠街の本質を浮き彫りにした、あの時間が。
男性を煙管をくるりと回し、いつも通りに笑った。
「──さぁ、今宵の客はどんなのだろうな?」
そう言う彼の呟きは紫煙に乗せられ街中の風に溶け消えた──…。
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