一宿一飯の恩義・そうして新しい物語が動き出す

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  それは、草木も眠る丑三つ時 ――   手嶌は自分の下半身にいつもと違う、   何とも言えぬ違和感を感じてぼんやり   目を覚ました。   並んで床に就いた実桜の姿は隣にいない。   でも、自分の下半身の布団がこんもり   盛り上がっていて、そこがもそもそと動き、   時折 ”グ グ グ――” という   くぐもった声が聞こえてくる……それは例えて言う   なら元妻との、その……夫婦の営みをしていた時   聞いていた声だ。   しかし、今妻はいないし。   ―― そこまで考え   手嶌はハッとして体を固くした。   自分のナニがとても熱くて柔らかい場所へ包まれる   よう導かれたのを感じたから。 『どうしたのー? 手嶌さぁん』   何となく心配気なその声は実桜のモノで、   それは紛れもなく自分の布団の中から   聞こえてきた……。   大きく深呼吸して、バッと布団をめくった。 「あー、ごめんね。起こしちゃったぁ?」   そう、悪びれる風もなく言い放った実桜は   手嶌の足の間に陣取り、まだ力を持たぬソレ   (ふにゃチン)へ愛おしそうに唇を這わせていた。 「キ、キ、キ ――」   パニくり過ぎ言葉が出てこない。   もう1度大きく深呼吸して必死に言葉を絞りだす。 「キ、キミは、何をやってるんだ」 「んー、何をって、そう真面目くさった顔で言われても  困るんだけど。フェラだよ。あぁもし、こんな  見ず知らずの小娘にやられるの気持ち悪いとか  だったら目ぇ瞑っててね。さっさと終わらせちゃう  から」 「そんな事を言ってるんじゃ ―― あぁもうっ!   とにかく止めなさいっ!」   実桜としては ”一宿一飯の恩義”じゃないが、   こんな自分にも親切にしてくれた手嶌へせめてもの   お礼のつもり、だったのだ。   手嶌から腕を掴まれ引き起こされて、   イタズラを見咎められた子供みたいな表情に   なった。 「あたしさ、フェラはちょっとばかり自信あったん  だけど……気持ち良くなかった?」 「だから、そうゆう問題ではないんだ。私はその  ―― 何らかの見返りが欲しくてキミを泊めた  訳じゃない」 「そんな事わかってる ―― けど……」 「……けど?」
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