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あてもなくただ歩き回るのにも
少し疲れて植木のブロックの上に座って
煙草をふかしていると変なオヤジが声を
かけてきた。
「―― キミ可愛いねぇ。お名前なんてぇの?
おじさんと"2"でどぉ?」
実桜はギロっと親父を睨んで煙草を
靴でもみ消し、その場から歩き出した。
「おい、なんだ? "2"じゃ不服か?
しょうがねぇなぁ。じゃあ奮発して
"3"出すからさぁ~。待てってぇ~」
(へっ。奮発してもたったの”3”かよ。
話しにならないわ。エロ動画でも見て、
1人でシコってね)
無視して歩き続ける実桜の肩を、
しつこく追い縋った親父がグイッと掴んだ。
「ったく、しつこいな。
酒臭い息で来ないでよ!」
実桜はその手を振り払った。
実桜は軽く振り払っただけなのに、
親父はわざとらしくその場に派手に転倒する。
「あ、いたたたたた ―― やったなぁ。警察呼ぶぞ
警察」
と騒ぎ立てるオヤジ。
周りに野次馬が集まってくる。
実桜は"やばっ"と、足早にその場から
立ち去った。
「こら待て、このくそガキ」
そう言って親父はしぶとく実桜の後を追う。
そんな2人のやりとりを1人の男が見ていた。
髪を後ろに撫でつけ、白のスーツに黒いシャツ。
煙草を道路に投げ捨てると2人の消えて行った方に
歩き始めた。
実桜は親父から逃げながら誘導されるよう
ホテル街の方に入って行き、
それに気づいた時には追いついた親父に
腕をねじり上げられていた。
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