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「ちょっ ―― なんだよ、おっさん。
おいらはウリなんてしねぇって」
「ちょっと可愛い顔してお高くとまってんじゃねぇ。
お前ら顔で客選んでるんだろ。調子乗るんじゃねぇ。
おじさんがたぁ~っぷりとこの中でお説教してやる
からなぁ~」
そう言って実桜は髪を引っ掴まれ
ホテルの中に連れ込まれかけた。
(マジやばっ)
実桜がそう思った瞬間、
1人の男が親父の腕を掴んで地面に引き倒し、
哀れ親父は地面とキスをしていた。
その男は親父の後頭部を皮靴で踏みつける。
いかにもコッチの人間じゃなさそうな男の姿に
実桜は完全に絶句した。
「最近の子供は礼のひとつも言えないのか」
そう言われ、実桜はハッとして頭を深々と下げて
お礼を言った。
「あ、ありがとう、ござい、ました……」
「キミ、名は? 」
そう言う男の顔を実桜はこの時、
初めてじっくりと見た。
(あれ ――っ、何か、何処かで会った事ある?)
「―― みお」
「ふぅ~ん……じゃ、まぁ、せいぜい浮浪児狩りに
遭わねぇよう気をつけるんだな」
男はそう言うと実桜に背を向け歩き出した。
「ま、待って! おっさ ―― 小父さん!」
「?」
「抜いてあげるって言ったら、幾らくれる?」
「……抜く?」
「今さらとぼけないでよ。あの辺り一帯がそーゆう場所
だってこと知ってて来たんでしょ」
「あ、申し訳ないが今ひとつ話しの意味が分からないの
だが……」
「え――っ、じゃあ小父さん、ここへ何しに
来たんよ」
「仕事の帰りだ」
「……んじゃ、改めて聞くけど、
今晩小父さんちに泊めてくれない?」
小父さんの真横にくっついて小声で囁いた。
「それなりのお礼はするよ」
そう言いながら手は小父さんの股間へ。
小父さんはハッとしてその手を払った。
「ごめん。こーゆうの嫌なんだったらもうしない。
だから、今夜だけでもいいから小父さんちに
泊めてよ」
「……ちょっと歩くよ。*丁目の交差点まで」
「――って、もしかしてバス通りの新築マンション?
すっげー、小父さんって意外に金持ちだったり
してー」
「いや いや、薄給の冴えないサラリーマンだよ」
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