1  プロローグ

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 勇者の家に知らせの使者がこないとは、いったい誰の手落ちだ!  まさか、まさか勇者である彼が、魔族の手にかかるなど・・・  冒険者時代からの友であり、引退後執事として彼に仕えるようになったヨハンだったが。  その危惧が、焦りが、大きな隙を生んでいた。 「執事の、ヨハンさん?」  呼び止める知った声に、振り向いた、その途端。  逆側から、肋骨の間に滑り込んだ、細身の短剣。 「悪いね、おっさんに恨みはないんだけどさ」  気配遮断を解いた『シーフ』がささやいた。 『僧侶』と二人で、崩れる執事の身体を酔っ払いでも介抱するかのように支え、裏の路地に引きずり込む。 「あんたがいちゃ、『王子』サマの邪魔になるんだってさ」
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