2 差し押さえ

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「この勇者の館に同居しておられたが、勇者殿はあなたに給与を支払われていたのですか?」 「私は使用人じゃありません、彼の家族同様の者です」 「『雇用契約なし』と」役人は記録する。 「でもあなたは、勇者殿と血の繋がった家族ではないですね」 「はい。親たちが仲が良く、兄妹同然に育ちました。  故郷が戦火に見舞われた時、彼と私、二人だけが生き残ったのです。  他に身寄りはなく、それからずっと二人だけで旅をしてきました」 「『単なる同郷の者』と」 「支払いは二人で割っておられたのですか?」 「いいえ。お財布はあの人が管理してくれていましたから、支払いや売買の契約などはすべて彼が」 「『個人財産は無し』ですか」 「あなたと将来についての事は口約束でもされていますか?」 「いいえ、すべては魔王を倒した後の事だと・・・」 「『将来の約束も無し』と」  聞き終わると、役人はこほん、と咳払いして続けた。 「勇者殿は旅先で聖女様と婚約されました。  一行の全員が祝福し、証人となりました」  え? 「ただの同居人であるあなたは、勇者殿の財産を継ぐことは出来ません。  彼の遺産はすべて、国家にもどされます。  この施設も薬草園も、国王陛下から賜った勇者殿の財産でありますから、あなたが利用する権利はないのです」  は?     
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