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「数日の猶予を差し上げますので、この屋敷から立ち退いていただきましょう」
「それまでに今後の身の振り方を考えておいていただきたい」
はあ?
「邸のすべては勇者殿の財産、差し押さえさせていただきます。
調合室にかかっている立ち入り禁止の呪を解除してください」
勇者のために長年にわたって薬を作り続けてきた、私の調合室。
ここが差し押さえられる?
ああ、でももう、私の薬を必要としたあの人はいないのだわ。
もう・・・必要ない・・・何も・・・
すべてを相談してきたヨハンももういない。
私が解除の呪を唱えると、男たちは立ち上がり、どかどかと無遠慮に調合室へ踏み込んだ。
しかし中からぎゃっという叫び声。
「ああ、気を付けてください。うちのバンバラは気が荒いから・・・」
遅かった。
いまいましげな悪口と共に、マントを食いちぎられた役人が飛び出してきた。
バンバラ(番薔薇)は王都でもあちこちで見かける、ありふれた魔草だ。
観賞用にもなるが、花心に牙の生えた口を持って、近づくとうなったり噛みついたりするので、よく果樹のとなりに植えて盗人よけにされている。害虫を食べてくれるし、餌いらずで育つ丈夫な魔草なので、人を雇う余裕のない貧乏人には人気が高い。
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