1  プロローグ

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1  プロローグ  その日、王都は、勇者一行の帰還に沸き返っていた。  見事魔王を倒し、歓迎の行列の中を進む、勇者たちの一行。  王子、聖女、僧侶、魔法使い、シーフ。  だが肝心の勇者の姿は、そこにはない。  六人の一行の中で、帰還できたのは五人だけ。 「勇者殿は見事、魔王を打ち滅ぼされたが、力を使い果たされ」 「動けぬ勇者殿に残った魔王の将どもが襲い掛かり、打ち取られてしまった」 「我等も力尽き果てて、脱出するのが精いっぱいであった」  世界に平和は訪れた。そして、勇者は戻らなかった。  歓迎の人ごみに巻き込まれ、もみくちゃにされながら、私は涙を流し続ける。 『勇者はどうなったの?なぜ彼だけ帰ってこないの?  彼に何があったの?なぜ私に知らせがこないの?  私はただ一人の彼の家族なのに!』      
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