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10月31日の空に
風が強い。
誰かのコスチュームから千切れたのか、オレンジ色のファーの切れ端が巻き上げられて夜空に昇っていく。地上にはコスプレが溢れていても、そこに魔女が飛んでいたりするわけはない。
そこにお化けなんて居るはずがないのは皆分かってるのに、ついでに言えばクリスマスの夜にサンタがソリで空を飛んでるわけはないのに。
さもそれがあるかのようにお祭り騒ぎをして――――バカみたい、と思う。
はぁ、とベンチで溜息をついた時、背の高いスーツ姿の男性が目の前に立った。
「お待たせ」
「……今日、会議入ってなかったですか。来ないかと思った」
「約束破ったことなんてないでしょ?俺、嘘つかない男よ」
「不倫しといてよく言います。奥さんは平気だったんですか」
「全然?向こうも友達と食事して帰るって返事来たから、あっちはあっちで彼氏とトリックオアトリートじゃない」
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