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君のおかげで空を見上げるのがクセになったよ。それまで空を見上げるなんてほとんどなかったんだ。あの星座はなんだとか、今夜は何とか流星群があるから流れ星が見られるかも知れないとかよく君は言ってたね。いつか一緒に川べりを散歩してたとき、子ども達がサッカーの試合をしていたよね。手をつなぎながら座り込んで眺めてたら、急に君が空に向かって深呼吸したんだ。空は真っ青でひこうき雲がぐんぐん伸びてた。あの横顔がぼくの記憶から離れないよ。今でも。
いつも隣でニコニコしていたよね。手を繋ぐのが好きなのって言ってさ。
シアワセだったのに、ある日君より開放的な女の子に告白されて、断れなくて、っていうか男だから内心うれしくてさ、ずるずる君に内緒で付き合ってしまったんだ。間も無く君も気づいたみたい。ぼくは嘘が下手だからなんとなくおかしかったんだろうな。君は黙って何も言わなかったよね。ぼくにはそれが何より怖かったよ。怒ってくれた方が楽だったよ。身勝手な言い分だけど。
それから、どちらともなく距離を取るようになって電話やラインもしなくなった。
あの、女の子とも上手くいかなくなって別れてた。
何年かして同窓会があって幹事が友達だったこともあって出席した。受付を済ませて、ふと向こうの方を見たら懐かしい笑顔がそこにあった 。ずっと気まずいまま話せないでいた。会の途中でホールのすみにあった椅子で酔いを覚ましていた
ら君がそっと来てくれたよね。
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