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かすかに聞こえた最後の言葉を強く胸に刻み込んだ。
言葉が消え、今まですぐ近くに感じていた少年の存在を感じ取れなくなったとたん、目の前の世界はいつもの見慣れたオフィスに戻っていた。
時間は午前零時。
デスクライトが書類の散乱する仕事机を煌々と照らしていて、暗い窓の外では今にも落ちてきそうな重たい曇り空が広がっている。
大竹は、少年の姿を探すようにオフィスを見渡すが、やはり居なくなっていることを改めて確認するだけだった。大きな落胆とともに、胸を焦がす熱い吐息がこぼれる。
「そら、君」
呟かれるのは最後に聞こえた少年の名前。
大竹は未だ感触の残った唇に指を当てて、傷になっている場所をそっとなぞった。
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