8人が本棚に入れています
本棚に追加
これが、都合の良い責任転嫁というものである。
「そぉーか……」
『優しい少年』は風呂場乱入という悪行を都合の良い言い訳で棚の上へと押し上げると、
「よーぉうくわかったあ……」
靴下が濡れるのも気にせずに『見た目だけ少女』に近づいた。
「せっかく災害警報を教えてやろうとした俺に湯を浴びせかけるとは、いい度胸じゃねぇか。なあ、素っ裸姫ぇー!」
ごきぼきばきー、と指から奇妙な音が鳴った。そして、牙を追剥く。
『見た目だけ少女』の丸出しになった乳を、背後から揉みしだくっ!
「びゃー、駄目だよう! こら、さわるなもむなつまんでひねるなっ! ひゃんっ!」
「うるさいっ! せっかくテレビを中断して来てみれば濡れ鼠だぞ、コラ。何の恨みがあるんだと問い質したい気持ちで一杯だが、今は災害が起る世界に一刻も早く向かわなきゃならないから、早く俺を転移させやがれっ! つーか、向こうの『侵食現象』は刻一刻と進行し続けてるんだ。直ぐにでもなんとかしなけりゃ、これから助けを望んで叫ぶ奴を守れねぇだろうが! 現に、こうして声は聞こえているのにっ!」
「だ、だったら! おすなはじくなまさぐるなっ! はぅん、先端がビリビリする! 第一、世界には強力な自己修復の機能があるんだから、そう簡単に被害は出ないんだよ――ていうか、このままじゃ座標指定がうまくいかないから、先端もってみょんみょんするなよぅ!」
「だー、座標なんてどうでもいい。行先の指定は俺が何とかする。お前は俺を転移状態にしてくれりゃいいんだ!」
パン職人がそうするように、『優しい少年』は『見た目だけ少女』の乳をこねくりまわす手に、妙なリズムをつけ始めた。
「ぎゃー、分かった、分かったからもうやめて。転移させるからぁ!」
そう言って『見た目だけ少女』は何もない空間に手を伸ばすと、ファスナーを開ける様な動作をして見せた。
上から下へ。
その動きに合わせて――世界が開いた。
渦を巻く世界の穴の向こうに目を向けて、『優しい少年』は眼つきを変える。
「上出来だ」
そして、『見た目だけ少女』の胸から手を放し、肩へ移動させた。
荒い息を吐く『見た目だけ少女』は、赤い顔で唇を尖らせ、自身の肩に乗せられた『優しい少年』の手にそっと手を添える。
「まったく。強引なんだよ?」
「許せ。すぐに帰ってくる」
その瞬間、『優しい少年』は世界に開いた穴と一緒に掻き消えていた。
最初のコメントを投稿しよう!