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だが、どんなにあちらに自信があろうが真友子のスマホは
自分の手の中にあるし、彼からの電話はそこに掛かっているのが現実。
だから、それをもう一度淡々と口にしてみる。
「でも、現に私のスマホは私の手の中ですし、それにこのお電話が
掛かってきていますよ」
そこまで言って、さすがに向こうの自信も少し揺らぎ、不安が覗いたらしい。
「あの、そちらの番号って『080……』」
やや早口に不安げな声が告げてきた番号に、真友子は思わず小さく苦笑した。
「あの、確かにそっくりですけど、こちらは『090』です」
えっ?
明らかに、電話の向こうの声が固まった。
そして、向こうで勢いよく頭を下げる絵が浮かんできそうな声で、
名も顔も知らない声の主が謝り始めた。
「す、すみません! あの、僕ものすごく焦ってて……。
あの、本当にすみません。全然知らない人間から、
いきなりこんな電話してしまって」
その慌てぶりが、なんとも微笑ましかった。
だから、どんな人かも分からないが、つい真友子も同情を口にする。
「いえ。たった一つしか違わない番号でしたら、間違いもしますよね。
スマホ、見付かるといいですね」
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