1 「090」と「080」

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だが、どんなにあちらに自信があろうが真友子のスマホは 自分の手の中にあるし、彼からの電話はそこに掛かっているのが現実。 だから、それをもう一度淡々と口にしてみる。 「でも、現に私のスマホは私の手の中ですし、それにこのお電話が 掛かってきていますよ」 そこまで言って、さすがに向こうの自信も少し揺らぎ、不安が覗いたらしい。 「あの、そちらの番号って『080……』」 やや早口に不安げな声が告げてきた番号に、真友子は思わず小さく苦笑した。 「あの、確かにそっくりですけど、こちらは『090』です」 えっ?  明らかに、電話の向こうの声が固まった。 そして、向こうで勢いよく頭を下げる絵が浮かんできそうな声で、 名も顔も知らない声の主が謝り始めた。 「す、すみません! あの、僕ものすごく焦ってて……。 あの、本当にすみません。全然知らない人間から、 いきなりこんな電話してしまって」 その慌てぶりが、なんとも微笑ましかった。 だから、どんな人かも分からないが、つい真友子も同情を口にする。 「いえ。たった一つしか違わない番号でしたら、間違いもしますよね。 スマホ、見付かるといいですね」
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